昭和40年に大学の機械系課程で、一週間の集中臨時抗議による空気調整工学概論を受講した。
熱力学・伝熱工学、水力学、流体力学、電気工学の知識を必要とする総合先端技術領域であると新鮮に感じられ、職業として選択し、翌年、電気通信施設の熱環境調整分野に職を得た。
それ以来、空気調和・衛生設備の設計・監理、海外施設等の建設コンサルタント、高度情報化対応インテリジェントビルシステム構築、ファシリティマネジメント(FM)コンサルタント・建物総合維持事業経営、そして現在の建築設備専門設計事務所経営と、多くの職域を経験してきた40年であったが、
一貫して私の軸足は建築設備技術者・建築設備士であったと思っている。
今日、建築設備技術者・建築設備士は、総合建築設計事務所、設備設計専業事務所、建築ゼネコン、設備ゼネコン、建物維持保全会社などで活躍する幅広い職能領域となり、40年前に建物附帯屋などと呼称されていたころと比較すると、隔世の感がある。
私は建築設備領域を職業として選択したとき、昭和25年に制定された法律202号「建築士法」において建築士が建築設備の設計・監理領域をも業務独占する法体系であることをうかつにも知らなかった。
「建築士法」が制定され半世紀が経過したが、その間、建築設備の発展は目覚ましく、換気・暖房設備が空気調和設備に進化し、電灯設備は受変電・照明設備から情報通信、防災・セキュリティシステム、ビル制御・監視まで領域を広げ、建築設備は地球環境時代の省エネルギー・省資源システムまで取り扱う領域に拡大している。
建築設備の進化に伴い、昭和34年の建築士法改正で、建築士に建築設備の設計・工事監理の権限が付与され、昭和58年の建築士法改正では、建築設備技術者の資格制度がスタートしたが、それは、建築士に対して建築設備の設計・監理に関するアドバイスを与える資格であった。
平成11年には同法で建築設備士の名称規定がなされたが、その権限は依然として限定的役割規定にとどまり、今日に至っている。
建築設備設計領域でいえば、世の中の建築設備設計図は、実態として総量の80%を建築設備技術者が担当しているとの調査結果もある。
しかし、建築設計分野が重層構造となっているためか、あるいは法律上では建前として建築設備設計・監理が建築士の独占業務となっているためか、設備設計責任の所在のあいまいさや適正を欠く設備設計料の問題などを内在していることが指摘されている。
建築設備の設計・監理に携わる建築設備技術者・建築設備士の立場からいえば、昭和25年に制定された「建築士法」は、半世紀を経た現在、建築設備設計・監理の側面において制度疲労を起こしていると思う。
建築設備専門設計事務所の存在基盤が弱体化し、社会に巣立つ若い人たちが建築設備設計技術者の道を選択できる環境が大きく揺らいでいる。
建築設備士の役割の実態を踏まえた法的資格の明確化や、いかに消費者の認知度を高めるかを論議し、「建築士法」を改正して「建築設備士法」を付加したものへと早期に法整備を行なう時期を迎えている。
また、建築設計事務所には事務所登録制度があるが、設備設計事務所についても同様な制度にして、責任と義務を明確化し、消費者に安心と信頼を与えることが必要である。
次の四半世紀に禍根を残すことのないように、それぞれの事業領域の建築設備設計分野で活躍している建築設備技術者・建築設備士の一層の連帯が今こそ求められている。 |